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オーガニック住宅
オーガニック住宅 / 2016年5月5日

住宅コラム38 森を守って、健康長持ち

木材乾燥炉の視察

 

 大塚さんと木材乾燥炉の導入に向けて見学に行くのは、こちらで天然住宅を建てていくのに使える木材がほとんどないためだ。スギは伐ったらすぐに防腐 剤・防カビ材のプールに漬けられてしまう上、さらに高温乾燥炉で精油分を抜かれてしまう。それではせっかくのスギの良さが失われてしまう。ところがここ岡山は、木材乾燥では日本一だという奇妙なプライドを持っていて、主流の乾燥炉が高温乾燥なのだ。

 そこで以前から大塚さんが連絡を取っているブランド力のある『吉野杉』の製材所の川島さんという方が、「値段に問題がなければ導入してもいい」 と言ってくれたのだ。約200万円の改造費で、割れ・歪みのほとんどない低温乾燥に切 り替えることができる。その乾燥機を作ったのが石川県の友人、大門システムの大門さんだ。

 その乾燥炉の性能を見てもらい、良ければ導入してもらうために石川県に行く。この乾燥炉では、乾燥が難しくて歪みが出やすいヒバですら真っ直ぐに乾燥できる。能登には曲がることで有名な『アテ(能登ヒバ)』がある。ヒバだから水に強く虫がつかないきれいな材料だ。しかし『アテにならない』という言葉の語源になったほど曲がるのだ。ところがこの乾燥機ではほとんど歪まない。 痩せることも割れることもなく、きれいに乾くのだ。スギもカラマツも低温乾燥してみた。見事に歪まずに乾燥し、しかも必要な日数は半分で済むのだ。スギは乾燥しにくく、カラマツは歪みやすいというのに、それを精油分を残したまま使える木材にすることができるのだ。

 

大門システムの低温乾燥炉

 

低温乾燥

 

 実はこの乾燥炉、原理的にはぼくの発想で実現したものだ。木材の中の水分を 入れ替え、その水分を木口からではなく表面から毛細管現象で引き抜 く。だから木材は表面より先に中心部から乾燥していき、なんと皮付きのままでも乾燥できる。

 それを実現できたのは、大門さんの粘り強さと能登ウッドに勤めていた米屋さんのマニアぶりのおかげだった。米屋さんがいないと操縦方法がわからない。 彼は試行錯誤を繰り返して、どうすれば木材が乾燥するかを一人静かに研究し続 けてくれたのだ。でかけたときにはクスノキの乾燥を終えたところだった。普通は広葉樹を乾燥機に入れたりしないが、周辺の人たちが「これもできるか」と持ってくるのだそうだ。おかげで「最近は乾燥が難しい木ばかりやってますよ」と米屋さんは言っていた。

 材は美しく精油分を残しているので絶対乾燥状態(「絶乾状態」と呼ぶ)の乾燥重量と比べて重い。今の木の絶乾状態の重さとされる重量は軽すぎる。なぜならオーブンで絶乾状態にしているために、精油分もすべて抜いてしまった木材を基準にしているためだ。本来の乾燥木は精油分を残しているから重いものだ。精油分がないと、良い香りがして虫を寄せ付けず、曲げ圧力に対して粘りがある木材にはならないのだ。

 この木材はほとんど寸法が縮まない。ある大工は縮む分を計算に入れて家を建てたが、縮まなかったのでやり直さなければならなかった。しかも精油分があって刻みやすいので、大工さんにも喜ばれている。

 

低温乾燥した木材。乾燥後も反りがなく、小さな割れもない。精油分も残したまま。

 

森を守りながら家づくりを

 

 しかし今の山の製材所は、買い叩かれていてとても厳しい。だからわずか200万円の改造費すら捻出困難だ。しかしこの乾燥炉への改造費なら、 我々が立ち上げた『天然住宅バンク』の融資を活用できる。それなら金利は単利・固定の2%だ。天然住宅もバンクも非営利で、健康で長寿命の家を目指すだけでなく 『森を守る』ことを目的にしているから、木材乾燥炉の製造・改造にも融資できるのだ。

 ある程度健康的な家なら他のメーカーでも建てているところがある。天然住宅ほどまで徹底的に有害物質を排除してはいないが。しかしそうした会社の人からは、よく「もっと安くできますよ」と言われる。よくよく聞いてみると、『木材をもっと買い叩けるはずだ』という話なのだ。山を持続できない家造りでは、社会もろとも滅びてしまうと思うのだが。

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